今日は私の就職先での業務になるM&Aを扱います。
M&Aに関しては「会社は誰のものか?」ということで、
一時期議論になりました。
しかし、この本ではそういう議論ではなく、
そもそも「国のためにM&Aを!」という大きな視野から
筆者のお二人が制度設計まで踏み込んで考えておられます。
私もこの業務に携わる人間として大いに参考になりました。
それでは、早速エッセンスを抜き出していきましょう。
・(敵対的買収ルールに関する東京財団案)
提言1:会社支配権の移転手続き明確化制度の創設
・・・株式上場会社について、取締役決議により、
「議決権の行使について、株主が有する株式の数が
発行済株式総数の20%未満であることを行使条件とする」ことが
できるものとする。
本制度は、取締役会決議によりいつでも解除できる。
既存の株主で、すでに20%以上の株主を持っているものが
いる時にはそのものの同意を必要とする。
上記導入決議は、株主の誰かが対象会社の支配権の取得を
目指すことを宣言してからは行うことは出来ない。
上記導入決議は、取締役の選解任要件を
定款で加重している会社は、行うことが出来ない。
あわせて、委任状争奪戦のルールをより公平な戦いが
出来るよう改善する。
(会社法と金融商品取引法をまたぐ特別法の制定が必要)
・提言2:公開買付ルールの改正
・・・「取締役選解任の委任状争奪戦の勝利を成立条件とした
公開買付」を認める。公開買付期間は現行の最短60営業日から、
最長120営業日まで可能とする。(金融商品取引法の改正が必要)
・提言3:種類株式の上場の容認・・・複数議決権株式の上場、
議決権株式のみの上場等、会社の実情に応じて設計される
種類株式の情報を幅広く認める(証券取引所ルールの改正が必要)
・猛スピードで成長しながらも、社会性、公共性といったところにも
配慮した経営を行っているグーグルは、
ポスト産業資本主義をリードしている会社であるといえるでしょう。
・グーグルの採用した種類株式・・・
A株は一株一議決権、B株は一株十議決権という設計
・かつてのメインバンク制のもと、ガバナンスが機能していた状況・・・
三越岡田社長を解任したときの三井銀行の小山五郎相談役、
マツダが危機を迎えた際の住友銀行出身の和田社長
最初に抜き出した提示案は委任状争奪戦とTOBの組み合わせです。
ただTOBで決着するのではなく、
委任状争奪戦を組み込むことで、
その結果が自分の保有する株式の価値に跳ね返るため、
会社の付加価値を高める経営者を真剣に選ぶ
インセンティブがあります。
この案の是非を考えるまでの能力は私にはありませんが、
M&Aにおける制度設計がいかに大事かということを
認識できたことは非常にいい経験でした。